そういうわけで、現在の情勢の背景とあとで3/10時点の情勢について。
ゼレンスキー大統領とウクライナ国民は勇気を示してウクライナの崩壊を防いだ。
ロシア側は2014年のような電撃的な国家転覆を企図したが結果は失敗した。
結果、世界はクリミアの時には無視できた矛盾に直面している。
【ミア・シャイマー氏の指摘ともののけ姫】
2014年のクリミア併合前後からこの状況についてミア・シャイマー教授は「緩衝地帯をなくす愚」を指摘していました(僕自身は当時ニューズウィークで「諦めよう、あそこ(クリミア)はロシアだ」と断言しているのを読んだ記憶があります)。
→NATO拡大はコソボ紛争から「日本国際問題研究所2010年・岐路に立つNATO(PDF)」(コソボ紛争でNATOは軍事的なプレッシャーを与えた上で住民投票で分離独立させる形を取り、クリミア・ウクライナでもロシア側が言及している)。→「NATOによるコソボ空爆の実態と人道的介入をめぐる議論」徳島大学 饗場和彦氏のレポート「ソラナ事務総長も……国際法を逸脱する面があることを認めている。」4ページ
この事の善悪は問いませんが、これは「もののけ姫(あるいは平成たぬき合戦ぽんぽこ)」です。
つまるところ「森(東側世界)の中へ、人間(西側世界)が【文明の光】を与えるべく森を伐採していった結果、そこに住んでいたモノとの争いになる」という……普遍的な物語です。
国連体制は「第二次大戦の戦勝国クラブ」ですからこの時の勢力図が「約束された国際秩序である」という見方は必ずしも根拠がないものではありません(特に、経済や情報による圧力を「戦争」と表現する現状においては……力によって奪われた「かつての東側を取り返す」というのも正当性の主張はできそうです)。
【現実の状況に応じた国家体制がある】
もちろん西側の国の一員としては「自由なほうがいいよ」とは思うわけで、そうするためには「民主的なシステム」を作ったほうが良いよ、とは思うわけです。
しかし、アフガニスタンへの米国の軍事介入などを見ると多大な期間と戦費をかけた結果が「タリバンの帰還・対米協力者の逃亡」で終わったことは記憶に新しいところです。
これは「コモンセンス(共通認識・常識)」の違いを僕たちにまじまじと見せつけてくれました。
翻って、民主主義国でも「立憲君主制の国」そして「共和制の国」があり、立憲君主制の国にもイギリス(そして戦前の日本のように)王家に一定以上の財産や権限が認められる国、現代日本のように「不思議なほど過小な権限や財産しか認めない」国もあります。
アメリカの同盟国のサウジアラビアは王制です(世界には良い王制と悪い王制があるのです)、シンガポールも「明るい北朝鮮」と揶揄されるほとんど一党独裁の仕組みになっています。
国家の「多様性」は常にあり、「それをどこまで認めるか?」を決定する権利は誰にもないというのが現実です、よく言われるように「国際社会に警察はない」わけです。
【G8の破綻と国際秩序の矛盾の深まり】
そして、世界秩序……目の前の問題を考えれば隣国の状況もその国の状態に影響を与えざるを得ないのです。
それに「安全保障」が絡めば簡単には行くはずがありません。
もちろん「クリミアに侵攻した」事は事実だったわけでG8からの締め出しの口実としては十分でしたが、クリミアが「西側に入る」事がとても許容できるとはアメリカを含めて誰も思っていなかったわけです(ロシアの黒海艦隊の基地でしたし)。
「ウクライナ問題」はNATOの東進の結果起きる必然だったわけです(もちろん熊を殴り倒して、民主主義の光を与えるのが正しいという考え方もありますが)。
実際にはNATO(アメリカもヨーロッパも)「そこまでやる気は無い」ように見えます。
歴史を遡ると2014年にロシアをG8からキックアウトしたことは「国連体制」の矛盾を維持し、新しい国際秩序へと進むチャンスを失った判断だったとも言えます。
ここで徹底して話し合いを進め、(プロセスとして住民投票などを入れて)東部二州の自治区化を進めていれば「G8で新しい線引きをする(第二次大戦の戦勝国特権という呪いを解く)」という新秩序に進めたかもしれません。
(ちなみに「G7」を中心にした国際秩序については救国シンクタンクの動画で述べられていましたので、参考にしてください)
【ウクライナ情勢3/10】
ゼレンスキー大統領がNATO加盟に否定的になったのは、西側の諸国がこの問題について冷酷(合理的…もし認めれば世界大戦が起きてしまう)であることを理解したからでしょう。
→NATOにウクライナ受け入れの覚悟なし(読売新聞)
ゼレンスキー大統領には責任はありません、ただそこには国際秩序の矛盾があります。
以下は戦術レベルの話になります。
ロシア軍は南部の原発(サボロジェと南ウクライナでほぼ2/3程度の原発を押さえる形になります)と黒海沿岸とドニエプル川東岸までは支配を進めるでしょう。
海・川は自然の防衛線にもなりますが、何よりも水運が使えるため補給上有利に働くからです(それに水利権……水が無ければ人間は生きていくことができません)。
原発についてはロシアのロジックを考えると「ならず者国家に核を与えてはならない」という話になるでしょうし、メリットも大きいので実行される可能性は高いでしょう。
うまくいけばモルドバの国境線地帯のロシア人地域(独立を要望しているとされる)まで連絡できるかもしれませんし……(ここは東側の防衛線としてソ連時代にロシア人が移住されたエリアになります)
ウクライナ軍は都市防衛は強固に可能だと思われますが、南部の機動戦には対応できる戦力が無い(ロシア軍の移動に追いつけない)ので、これは覆すことはできないと考えられます。
空軍基地も破壊されて「飛行禁止エリア設定」をゼレンスキー大統領が訴えたところからみて、空軍での防衛もできない状況と見られます。
各国から集まっている「義勇兵」には相当数の「元特殊部隊員(民間軍事会社の要員)」が含まれていると考えられますが、これも都市防衛には力を発揮しても機動戦は不可能でしょう。
歴史的には黒海沿岸は「ノヴォロシア」と言われる地域で、エカテリーナ時代に「新ロシア」として開発され「ロシア人の土地」というイメージも強いエリアでもあります(そして戦争直後はともかく、過去の選挙の結果などを見ると東部住民はロシアへの併合を容認していく可能性は低くありません)。
ロシア軍は今週一週間は「補給と再編」に務めています(ほぼ支配地域の進捗なし、キエフの正面のみ「腕を伸ばした」形)、交渉の圧力になりますし、交渉が失敗すれば即総攻撃という流れになるでしょう(寒波が来ていて「泥将軍」への期待は下がりつつあります)。
【ウクライナの苦悩と選択】
ウクライナのゼレンスキー大統領=2022年2月28日、ウクライナ・キエフAFP=時事
結果がどうなるかはわかりませんが、ゼレンスキー大統領がここ(この週末)で大きな譲歩をしてもそれは臆病でも、卑怯でもありません。
都市の争奪戦は悲惨です……どちらにしても勝手な事は言えませんが、ここまでで大統領も国民も十分な勇気を示しました苦渋の決断となるとは思いますが、これまでの勝利を背に名誉ある停戦を選択するチャンスであることは間違いありません。
(ちなみにプーチン大統領について「ボケている」だとか色々と言う人がいますが、わかるはずがない事……単なる予断なのでそこは差し引いて考えましょう(交渉を有利にするために「イカレタ男」を演じるのはよくあることです)。
彼らには彼らのロジックがあり、それは否定する事は逆に紛争を招くことはここまで見てきたように明らかです、交渉を始めるべきだったのは2014年だったように思います……。
SWIFT排除やロシアデフォルトというのも言われるほどの騒ぎにはならない可能性が高いでしょう……「デフォルトしたから」ロシアに核ミサイルを射てるわけではなく、何らかの形で交渉して返してもらわなくては「貸してる側も困る」からです、もちろん経済的にはロシアのダメージは甚大ですが、経済だけでは結論されないのが現実です)
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