コラム「アナログ(ボード)ゲーマーの最大の特性は『選択疲れ』を起こさないこと」

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その船を漕いでゆけ おまえの手で漕いでゆけ
おまえが消えて喜ぶ者に おまえのオールをまかせるな
-中島みゆき「宙船」

 

今週のニューズウィークでも記事になっていましたが、「選択疲れ」という言葉が徐々に注目を集めつつあるように思います。

これは「完璧を目指す」人が”不幸を感じる”という研究結果でもあります。

 

【『選択の多さ』が人間の幸福度を下げる】

選択肢と選択機会が多すぎると人間は「実際に思考力が低下し」「獲得した成果への満足度も下がる」という研究成果がこの2~3年取り上げられる機会が増えてきました。

 

【多い選択肢は人を集めるが・・・】選択できない人も増える。

【多い選択肢は人を集めるが・・・】選択できない人も増える。

たとえば「ジャム販売の実験」、これは「24種類のジャム販売所」と「6種類のジャム販売所」で行う実験です。

この研究結果は一文に要約すると「24種類のほうが6種類よりも多くの人を集める(多い選択肢は人を集める)、ただし味見するのは平均でどちらも3種類、成約率・購入後の満足度は24種類が負け、疲労度も高まる」というものです。

ちょっと意味深でしょう?

 

【水準を超えたらいいじゃんという幸福】

また、選択の精度をとことんまで突き詰めるという『完璧主義』も一般に満足度を下げます。

『この線を越えたらいいじゃん』という『水準主義』のほうが幸福度が高いというのです。

 

【十分"幸福な"選択】突き詰めて得られるもので幸せになるとは限らない。UNIQLO

【十分”幸福な”選択】突き詰めて得られるもので幸せになるとは限らない。UNIQLO

確かに、フリース1枚買うときに、ユニクロで気に入ったカラーを選んで「セールだし」と買うほうが、製造工場を突き止めて、為替リスクを考えながら、メールで相手の人間を探りつつ、「世界最低価格で」購入するよりは(仮にかけた時間が同じでも)幸福な気はします。

 

【アナログなゲームは『選択』を繰り返す『遊び』】

とはいえ、一般的な統計としては「選択の多さ」が不幸を呼び起こしますが、実際研究を進めると「そうじゃない人も居る」 ということもわかってきました。

これは「選択の多さ」について「ポジティブ」に捕らえている人です。

 

【西洋列強による世界分割のシミュレーション"ゲーム"】みなさんなら「苦行」に感じると思いますが、(この写真では顔は切っていますが)プレイヤーは明らかに「楽しんで」います。

【西洋列強による世界分割のシミュレーション”ゲーム”】みなさんなら「苦行」に感じると思いますが、(この写真では顔は切っていますが)プレイヤーは明らかに「楽しんで」います。Pax Britannica

「選べることが幸福である」ということを認識している人は「一般に不幸を感じさせる多すぎる選択肢」で『ハッピー』になる事も確認できています。

 

アナログゲーマーはこの傾向が特に強いように思います。

なぜなら「良い選択をすると報酬を受け取る」という経験を繰り返すからです。

 

具体的には、細かい一つ一つの『選択』がプレイヤーに『機会やリソース』を与えるという経験を繰り返します。

あるリソース(ゲームによっては『金』であったり『人員』であったり文字通り『資材』であったりです)は最終的にゲームの『勝利』に必要なポイントであるのはもちろんですが、あるポイントが一定以上でなければ『発言権が無い』というような自体にも接することになります(これは悔しい!!・・・ですが少し頑張れば『クラブ入り』することも出来ます)。

 

もちろん『法の上での平等』などは尊い価値ですが、小学校以上では『スタートの平等』の上で『公正な競争』のほうが世界を律しているのが事実です。

G7(先進七カ国会議)など「一定以上の実力者」が『世界の方向性を決める』というような状況もあるのです(今はかなり怪しくなっていますがそれでもG20という『クラブ』が構成されています)。

 

【敗北】このゲームでは僕は残念ながら敗北!!でもリトライはいくらでもできる。

【敗北】このゲームでは僕は残念ながら敗北!! でもリトライはいくらでもできる。

こういう現実に慣れ、しかも時には『選択の工夫』によって勝利することで『選択』を『肯定的に』とらえるようになります。

将棋などとは違って「プレイヤーの多さ」がこういったゲームの習熟を助け(他のプレイヤーが『敵』とは限らず、ケースによっては協力的な関係が生まれます)、「勝負のアヤ」とはいえ実力が圧倒していないプレイヤーに勝利を与えることもあります。

 

【「勝敗のあるコミュニケーションツール」は難しいゲームである必要は無い】大切なのは「選択の工夫」が出来る事と多人数でのプレイだ、参考に出来る例の多さや、さまざまなパターンでの助言が理解を助ける。そういう意味で最高のゲームはこのブロックス(ルール解説はこちら)。少し年齢が上がって「ドラマティック」なゲームが良ければ世界をウイルスの感染から守る「パンデミック」

 

「選択へのポジティブな認識」が『アナログゲーマー』の重要な特性であると思いますし、リーダーシップや企画者などの「一般の水準を超えた選択が必要」な人にアナログゲームを薦める理由でもあります。

 

また、良いゲームは『ある事柄』への理解をより深めてくれます。
例えば歴史的な事件を扱うゲームではなぜその「選択者」がその選択に誘引されたかを『体感』させてくれます、自由な意思決定者の視点や、それを束縛する「なにか」の存在に肉薄できる経験は様々な層の『リーダー』にも有用な経験を与えてくれます。