三種の神器の最後の部分、雨具の説明でしつこく述べたように、結局雨具というのは「生地(メンブレン)」です。
今回はそのメンブレンについてさらにマニアックな話をしましょう。
ゴアテックスの機能
ゴアテックスの機能を単純に書くと以下の二つの数値で示されます。
耐水圧50,000㎜
透湿性25,000〜98,000g/m2
耐水圧は「水の侵入に耐える力」で、「嵐で20,000㎜」とされていますゴアテックスの機能が如何に強靭かよくわかるでしょう(ちなみに雨傘などはせいぜい500㎜程度です……体に張り付けて使わないですから多少染みてても問題ないわけです)。
……ちなみに「耐水圧が高いのは無意味」というわけではなく、登山なら「リュックの肩ベルト下」などはザックの重量によってさらにさらに圧が加わるので登山グレードの雨具は30,000以上が一つの基準になっています。
透湿性は「グレード」によって違いがありますが、一般的な商品では30,000~40,000g/m2です。
参考にするのはモンベル ストームクルーザーこちらで35,000g/m2となっています。
(1平方メートルのゴアテックスシートが一定の条件で「1時間に3~4kgの水を通す」というような指標になります→試験などは個人でもこんな感じで行えます)。
防水透湿性素材とは?
さて、『防水透湿性素材』とはどんなものでしょうか?
防水透湿性素材は水蒸気を通し、水を跳ね返すという特性を持つものです。
簡単に言えば『雨を跳ね返し、汗を逃がしてくれる』という機能を持ちます。
この中には主に二つの系統があります。
これは「ゴアテックス」と「それ以外(ウレタン系)」です。
実はこの二つは明確に技術が異なります。
まず、ゴアテックスについての説明をしましょう。
ゴアテックスは「超微細穴あきフィルム」の力で「防水透湿」します。
水蒸気は穴を通って出て行きます、そしてこの穴は非常に小さいので「水」は通りません。
イメージはわかるでしょう?水と水蒸気では、水蒸気のほうが小さいのです。
(まあ厳密にはどちらもH2Oなのですが、液体と気体では実際通過できる穴の大きさは変わります)
「水(液体)は通らなくても、水蒸気(気体)は穴を通る(通るくらいの穴)」というのはイメージできましたね?
ゴアテックスの働きと機能
さて、これで基本的な理解はOKなんですが、でも考えてみると不思議じゃないですか?
「穴が開いてるだけなら、水蒸気は出るかもしれないけど、入ってもくるんじゃないの?」と。
実のところ・・・・・・
そうなんです。
ゴアテックスの超微細な穴には弁なんてついてません(つけれません)から、ほうっておくと水蒸気は出入りします。
でも、実はまったく問題なし安心なのです。
なぜか?それは雨具の内側と外側では「温度差」があるからです。
温度差で水蒸気は排出される
中学の理科の実験でやりましたよね?
『物質は暖めるとふくらみます。』
気体も例外ではありません・・・・・・というより、むしろ気体はより温度の影響を受けやすいのです。
水蒸気という「気体」も体温で温められると『膨らむ』わけです。
雨具の内側は体温で温められて『膨らんだ水蒸気(高圧)』、雨具の外側は大体それよりも気温が低いことが多いので『縮んだ水蒸気(低圧)』という状態になります。
ですので、水が低きへと流れるように、『高圧の内側から、低圧の外側へと』水蒸気は流れ出ていくのです。
さて、この解説でわかると思いますがゴアテックスの特性としては『内外温度差が高い=気温が低い』ほど透湿性が高まるということになります。
現実としては「透湿性が高くても日本の低山を歩いていると汗で体は濡れる」という事になります(汗は多くかき、内外の温度差が低い=気温が高いからです)。
……とはいえ、重要なのは「寒いときに体を濡らさないこと(→生死に直結する)」ですから、この程度の不快はまああきらめざるを得ないでしょう(ポンチョというオールドな対応の方が効果があるかもしれません)。
撥水性の維持が重要
また、「撥水性能」はこの透湿性を維持するための隠れた立役者です。
ゴアテックスメンブレンは高度な防水性能があるので、仮に生地がベトベトにぬれても水を中には通しません(ぬれたように感じるのはムレとそれが雨で冷やされるためです)。
しかし、表面がベトベトになっていると、その水の膜で穴がふさがってしまいます。
したがって、撥水している状態でなくては透湿性は発揮できないわけです。
同じようにゴアテックスはあくまでも「気体」を通す仕組みなので、雨具の内側には一定のスペース(空気の通る)があったほうが良いです、夏でも長袖の化繊ウェアを着ることが撥水性能をよりよく発揮させる事になります。
ゴアテックスのメンテナンス
メンテナンスは汚れを洗濯などで落とし(すすぎは念入りに!!洗剤が残るとダメージが大きいです)、撥水剤に着けるか塗るかして、あて布をして中低温(140‐160)のスチームアイロンをかけると表面の細かな撥水毛が再度立ち上がり撥水性が回復します。
ニクワックスが洗剤も撥水材も定番なのですが、洗剤は「中性の方が素材には良い」という説もありますので無理に高価なニクワックスでなくてもエマールなどを使った方がいいかもしれません(僕は今はエマール使っています、問題は起きていません)。
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