そういうわけで、残念ながら日曜日は大雨が直撃してしまい金剛山は中止になってしまいました。
そういうわけでぽっかりとスケジュールが空いてしまったのでこの日曜日は10年ぶりぐらいに映画館で映画「スノーデン」を見ましたのでその解説と最後に少し感想を書いてみます、このサイトの方針とは全く関係が無いので興味なければスルーしてください。
【始まりは特殊部隊】
始まりはみなさんおなじみの「フルメタルジャケット」から始まります(!!)
元オタク(主にコンピュータ)だったスノーデンは実は米軍に志願しており、イラク派兵の特殊部隊(おそらく特殊作戦群の特殊作戦通信大隊)として訓練コースに入っていました。
上の写真を見るとイメージが違いすぎて驚きでしょう !!……けれど現代の特殊作戦は「デルタだSEALsだ」という『荒事』の集合ではなく、グリーベレーなどが担当する『人心掌握戦争』が主軸なので、様々な技術を持つ部隊員は必須の存在なのです。
……ですが、長年のオタク生活の不摂生がたたったのか訓練中に両足を疲労骨折して除隊になってしまいます(まあ特殊部隊のトレーニングでは決してめずらしい事ではないのですが)。
そして、これが結果としては「より適性の合う仕事へ」の道を開く事になります。
【スノーデンの履歴とCIA】
元CIA職員(元NSA臨時職員)スノーデンがやった事をみなさん覚えておられるでしょうか?
スノーデンはCIAとNSAが作り上げた『全ての電子情報(通話の音声データを含む)』を盗聴できる仕組み「PRISM」の存在を明らかにし(内部告発)世界的なニュースになりました(これは「歴史上最大規模の」人権侵害です)。
まず舞台になるこれらの組織について大雑把な解説をしましょう。
米軍を「傷病除隊」したスノーデンの『特性(特技と特殊部隊に入れる来歴の正しさ)』に注目した情報機関からのコンタクトを受けたスノーデンはまずCIAの職員になり、ヨーロッパのジュネーブという『典型的な外交の場』へと送り出されます。
CIAはこのような『伝統的な情報活動』をメインにする組織で、映画で描かれる工作も『昔のスパイ映画』のようなノリですが……まあ実際そうなのでしょう(写真に写っている「本社ビル」はともかく「現場」のスパイにはタイムカードも労働法規も存在しないグレーな仕事です)。
スノーデンはある経歴の解説では「NSAとまず臨時契約を結んだ」とあり「CIAには情報セキュリティ担当」としての赴任だった点を考えるとスタートから「NSA所属」だったのかもしれません。
スノーデンはこの実態(オールドマッチョな組織文化)にウンザリしてしばらく(ある情報によると2年ほどで)CIAを離脱し、一般企業(DELL)に入社しNSAに派遣される事になります。
(このように外部からの派遣になって組織を循環する事を「情報機関の回転ドア」と呼ぶらしい、まあこのあたりは大統領選のたびに官僚が千人単位で入れ替わるお国柄もあってのことだと思いますが)
【スノーデン、ハイテク組織NSAへ】
NSAはかつては「No Such Agency(そんな機関はない)」ともいわれた秘密組織で、CIAのような「人的情報収集」ではなく「電波解析や情報解析での情報収集」を担当する組織です。
昔のニュースでは「象の檻」といわれた三沢、沖縄などの巨大通信傍受施設を運営して「エシュロン」という世界規模の無線情報傍受解析システムを運営していたのがNSAだったと今ではわかっています。
(NSAなどを統括するのは軍を統括する『国防総省』、だいたいどの国でも「政府直轄(アメリカではCIA)」「軍事系」「警察系(同FBI)」と別々に情報機関を持つ、アメリカは各々が特殊作戦部隊まで持っているので複雑‼︎…まあ、それも標準か)
僕達がイメージする「ハイテクスパイ組織」はNSAのものです(上から全世界の情報をリアルタイムで監視できるような……逆に現場で「上は何を考えているんだ!」とかいいながら銃弾を避けているのは特殊部隊員かCIAのオペレーターです)。
スノーデンの暴露はこの「世界的な情報組織」が軍事情報やウワサされていたような経済情報のみならず……
「全ての人の(例えばアメリカの友好国ドイツ首相)」
「全ての盗聴可能な情報を収集」
しかも検索エンジンで簡単に検索できる仕組み(収集はPRISM、検索はHEARTBEAT)を作り、不透明な手順(秘密裁判所はあるが、申請も承認も適当)で運用していた事を『疑惑(※)』から『証明された事実』にした意味があります。
※疑惑…合衆国の議会でも『NSAが情報収集していたアメリカ人の人数』は繰り返し開示する事を要求されていたが、国家情報長官は「意図して収集したものはない」として開示を拒否していた。
【感想・スノーデンと日本人】
オタク(かつては日本のアニメサークルのWEBサイトの管理をしていた事もある)が米軍に志願して世界最高の諜報機関とやりあうに至るまでのこのストーリーはリアルな「novel(新しい話)」です。
「元スパイが膨大な情報を盗み出して、それを内部告発に使った」というだけのものだ、エンディングで描かれているようにそれらを『国家の敵』とする価値観もありえますし、『勇気ある告発者』とする価値観もあります。
僕個人としては勇気ある告発者としてのスノーデンに好意を持ちますが、『国家安全保障の責任者』はルール遵守よりも勝利を望むのも良くわかります。
(例えば特殊部隊は立てこもり犯の数倍の人数を投入するのが普通だ、「相手が悪であるならば」こういうズルは当然「正統」任務に忠実な軍人を体面のために失うわけには行かないのです……ですが、かつてパウエル国務長官が述べたようにテロリストは逆から見れば「自由の闘士」である事も少なくないのです)。
……このストーリーを支えた精神的なバックボーンは日本的な倫理観です。
驚きですが日本の「現代の物語の文化」が近現代の歴史につけた巨大な足跡がこの事件なのです。
オバマ大統領の「日本的な」価値観のある一面が世界を包んだのがこの数年でした、しかしそれらは『物言わぬ現実(実態)』を変える事はできませんでした。
今時代はまた野蛮に振れようとしています(そして皮肉な事にそれは「戦争をしないアメリカ」を実現したオバマ氏の責任とみなされるかもしれません)。
韓国は揺れ、中東はすでに混沌の渦の中にあります。
アメリカはもちろん、もはや日本も世界の『混沌』と『秩序』の最前線に立つ時代になりました。
僕達は否応無く「実現する」事を要求されるでしょう。
翻ってスノーデンへの評価は(少なくともこれ以上は)毀損されることは無いでしょう、彼は「NSAのやっている事を国民に知らせる」という適正な目的を定め「実現した」からです。
『実現した』ということはこれは「(実現可能な目標を賢く)考え」「(勇気を持って)行動した」事を示す最高の成果です。
技術においては……とても話になりませんが「賢さと勇気」においては負けないようにありたいとは思いました。
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