経済のキホンのキ
「キホンのキ(基本の其)」なんてよく言いますが、僕は「そもそも其というのが本来なら建物土台を意味し、その本なので土台が置かれる基礎を意味するんですよ」という玄人が思うところから「さらに一歩踏み込まないと」伝わらないと考えているので「超初心者登山」だとかいうコンセプトを掲げているわけです。
(……と、同時にボードゲームのトレーナーでもあるので、「長々説明なんてしてもダメ」という事で、「簡単で安全なルートで始めて、学ぶ」のが超初心者登山のコンセプトになっているわけです、初心者に学んでもらうためには小さな知識で楽しめるルート選定が重要なのです)
不景気と需給ギャップと経済対策(減税・給付・その他)
そういうわけで本日は「不景気と需給ギャップと経済対策」について、このページでPOSTの下に必ず表示されている「一般教養で学んだ教科書には何が書いてあったのか?」から該当する1ページを抜いてきて説明します。
まず不景気とは簡単に言えば「去年より需要が減った状態」です。
通常先進国では数パーセント向上するのが普通なので、減るのは異常事態ですし、大きく減るのは大事件が起きた時です。
「需要が減る(特に急に減る)」事の何が問題なのかというと、当たり前ながらその前年まで「緩やかな経済環境変化(基本的に右肩上がり)」を想定して「供給能力(設備と雇用)」は準備されているからです。
この「需要が減った」と「供給能力」の差が「需給ギャップ」です。
結論:不足した分に足りなければ減税しても不況は来る
結論だけを言えば「この需給ギャップを埋める目的で行われるのがマクロの経済政策」です、つまり「需給ギャップが15兆円なら15兆円打てば±ゼロ」「景気拡大というならここから少し(あんまりインフレにならないくらい)積み増す」、逆に「5兆円とかの規模で打っても、結果はマイナス10兆円の景気後退にしかならない」という事になります。
景気後退ということは、労働者、しかも派遣社員のような「調整弁」のような扱いにされる人や、弱小企業に10兆円分の皺が寄せられるという事になり、しかも社会全体では誰もトクをしないという話になります。
(安易に移民を入れると家族や本人の社会保障費で全体ではバランスしないという最近の保守党の発信に近いものがあります、全体をとらえる必要があります)
話題の「増税メガネ」の問題点はここまで国民負担率(それがナントカ保険という名前でも強制徴収なんざ税です)を高める政策にGoを出し続け、この期に及んでも「需給ギャップをさっさと埋める」という意思表明さえできていないことです。
……さて、ではこれらのメカニズムについて、砕いた説明をしていきます。
興味があれば以下もご覧ください(関連しそうなことをつらつら書いていきますのでどこでやめていただいても良いですし、拾い読みでも問題ありません、覚えてもメリットは少ないと思います)。
「不況」需給ギャップの「衝撃と実態」
「需要が減る」と「余った部分」が出てしまいます、「余った供給能力やそれで作られる製品」は買いたたかれる事になります、「価格」が下落し、それはほぼイコールで労働者の待遇改悪につながります。
(社長のベンツがマーチになって、従業員の給与を維持するケースもあるかもしれませんが……レアケースなのはみなさんご存じでしょう)。
そして、もしもつぶれるなら弱小工場や商店です。
「たった2%程度の縮小」でも基本的には「弱者のところにまとめて押し付けられる」ので、一部の企業大きな賃下げや、一部解雇、それでもだめなら弱小企業倒産などの形を取ることが普通です。
「不況型倒産」の問題点は「弱小工場や商店」も価値を生み出していたことで、経済全体では「弱肉強食だからこれで良いのだ」とはなりません。
確かに小さな目で『近所の小売りマーケット』で見れば、近所の商店がつぶれれば周りのコンビニの売り上げは多少高まるかもしれません。(経営的な弱肉強食視点)
しかし、無産者となった老夫婦は生活保護を受けるようになり、その商店が生んでいた価値や維持のために必要とされた購買行動(需要)などがなくなるため、経済全体でみるとメリットはありません。
むしろコンビニとは違う「高めの商品を買う」という行動が起こっていたならその分、付加価値は下がってしまう可能性もあります。
経済全体では「更なるマイナス」を生むだけです。
(従業員の待遇改悪で止まった場合は……賃下げなら何とかなりますが、解雇となると上と同じく生活保護や就業支援が必要になり結局メリットがないことが様々な研究で明らかになっています)
好景気下の競争のほうが苛烈で、人間フレンドリー
ちなみに余談ですが「競争」は好景気下のほうが苛烈に行われます、「貴重な資源」を奪い合う金を積めなくなければ負けるという競争になります、特に人に対する投資で失敗すると黒字でも会社がつぶれます、なんせ引き抜かれて人がいなくなればサービスや製品を提供できなくなりますから……黒字倒産です……が、こちらの競争のほうが人間は幸福でしょう。
「人物金」の好景気下の競争のほうが、「金物人」の不景気下の競争より健全です。
(ちなみに大胆な投資が可能になる好景気下の競争のほうが技術の変化などを早める事も可能です)
「不況の衝撃」を弱める方法「需給ギャップの埋め合わせ」
ちなみにケインズ以前の経済学では、みなさんが考えるような「不景気でも自己責任(市場の調整にお任せ)」というアプローチが正しいとされていて、経済調整にはケースによって100年程度かかることもありました(資本が偏在していた昔はつぶれた商店などが立ち直る速度は遅く、一度潰れるとビジネスが戻るまで1世紀単位の時間がかかったわけです)。
また上で述べたように「ビジネス」や「ビジネスパーソン」を不況という事故で起きた需要低下で退場させることはメリットが無いのです。
ではどうするか?
方法は現代では比較的簡単で、需要が回復するまでの間「政府」が需要を担えばいい、簡単に言えばお金を出して買い支えすればいいのです。
もともと需要があったものをたまたま事故った企業や、業界、あるいは地震や感染症などの影響で一時的に需要がシュリンクしているだけなのであればその分のお金を出せばよいのです。
財政出動「減税・給付・その他」
「財政出動」とか言いますがお金の出し方にはいくつか種類があります、経済全体での事故だった場合は「減税(減税は取らないという意味で「先の先」的な財政出動です)」や「現金一括給付」という手段があります。
減税は「やーめた」で済むので一番手間もかからず、早いというメリットがあります(消費税、ガソリン税など経済全体にかかわる税は所得税より早く効きます)。
給付も早いですが、手間がかかるので普通は嫌がられます……日本では「変なチケットを作る」など利権が作れるので自民党だけでなく○明党などが好むため多用されるイメージがあります。
その他
道路工事などの「公共事業」も有名な手段ですが、こういう一定の業界を中心にする方法だと社会がゆがんでしまうという欠陥もあります。
2‐3年なら良いと思いますが、10‐20年と大工事が続くと「それが無くなったら存続できない供給規模」に肥大してしまう可能性があります、まあ日本国全体でずっと続けないといけない規模があると思いますのでそこを超えなければ良いのですが。
まあ、とはいえ公共事業がダメというわけではありません、大事なのは社会全体で「失われた分の需要が発生する事」(失業者が出ない事)が重要なのです。
……個人的には例えば不況の観光業界からレジ係を建築業界に転職させずにそのまま給付金(補助金)などで雇用を維持させた方が良い気がしなくはないですが、儲かる仕事(業界)に人材をシフトさせたい、させた方がいいと考える人もいます。
公共事業の欠点は「その業界規模の10~50%」くらいしかできないことです、特に今の日本のようにギリギリまで体制を絞っている状態だと+10%分くらいが限界でしょう。
金を積んでも、働ける人は瞬時に増えないので、残業が増やせる分で対応するくらいしかできないからです、これは供給制限と言います。
ピンポイントの施策の事例は、他にはローマ時代は地震が起きたらその町の税は免税になり、軍が入って街道などは整備してくれました。
昨年までは煩かった新型コロナパンデミックでは飲食店やホテル、旅客業などにダメージが大きかった事がわかっていたはずですから、そこに対する補助金でもいいでしょう。
ただ、補助金は公共事業同様に市場をゆがめる効果があるので嫌われます。
需給ギャップを埋める「近代経済学の大発見」
ちなみにこれらの費用を出すために国債などで資金を調達する方法は正当化されますし、結果経済が最もマシなダメージで済むので財政的にもプラスであることは様々な研究で証明されています。
なので、アメリカは「XXX年に一度だー」みたいなイベントが起きてもすぐに立ち直ることができるのです(この辺りの知見がイマイチだった第二次世界大戦前はブラックマンデーの衝撃から立ち直るのに数十年かかっています)。
(下の図は同じく「一般教養で学んだ教科書には何が書いてあったのか?」より)
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