前編では、富士通LIFEBOOK U938/SにOpenCoreを準備し、macOS Venturaのインストールを開始するところまで書きました。今回は、その後の「本当に使えるMacになるまで」と、まだ残っている不具合の記録です。2026年10月26日現在の実機確認に基づきます。
結論:Ventura 13.7.8のインストールと内蔵SSDからの通常起動に成功。Intel HD Graphics 620のアクセラレーション、Wi-Fi、Bluetooth、音声出力も利用可能になりました。一方で、スリープ復帰・内蔵SDカード・HDMI外部画面は未解決または再確認待ちです。完全動作ではありません(笑)。
1. 本当に内蔵SSDだけで起動できるようになった
当初はSDXCカードをUSBカードリーダーに挿してOpenCoreを起動していましたが、最終的には内蔵512GB SATA SSDのEFIシステムパーティション(ESP)にOpenCore 1.0.8を配置し、外部媒体なしで起動できるようになりました。起動メニューも通常は隠す設定に変更しています。
ここで紛らわしかったのが、本体内蔵SDカードスロットからのブートは実現していないこと。成功したのはSDカードをUSBカードリーダー経由でUEFI起動する方法でした。別の読者が試すなら、この違いは重要です。
2. GPUアクセラレーションの確認
起動途中の画面停止を避けるために、初期段階では一時的な診断引数-igfxvesaを使用しました。しかし、その状態はGPUアクセラレーションが無効なので、最終的な成功ではありません。設定調整後の診断では以下を確認できました。
| 項目 | 確認結果 |
|---|---|
| GPU | Intel HD Graphics 620(デバイスID 0x5916) |
| VRAM | Dynamic Max 1536MB |
| Metal | Metal 3 |
| 内蔵画面 | 1920×1080 / 60Hz |
これで少なくとも「macOSからGPUとして使われている」状態には到達。実際のブラウザーの滑らかさは別の評価で、Safariには引っ掛かりを感じたためChromeも試すことにしました。
3. Wi-Fi、Bluetooth、音声の順番に詰めた
無線LANはIntel Wireless-AC 8265。Ventura向けAirportItlwm 2.3.0を導入し、通常利用を確認。BluetoothはIntelBluetoothFirmware、IntelBTPatcher、BlueToolFixupを組み合わせて動作しました。Bluetoothを使った認証にも成功しています。
音声はRealtek ALC255。AppleALCがロードされていても最初は音声デバイスが表示されず、layout-idの選び方が課題でした。途中、EFIのマウント権限やデバイスパスの選択でスクリプトが失敗。そこで複雑な書き換えをやめ、起動引数alcid=3で最小試験を実施。再起動後のシステム音「Glass」の再生を耳で確認し、音声出力PASSとしました。
ただし、内蔵マイクとヘッドホン端子は未検証。「ドライバーが読み込まれた」ことと「実際に音が聞こえた」ことは別の合格条件です。
4. 電源管理は割り切って運用
いちばん困ったのはスリープです。復帰操作で内蔵画面が一瞬だけ明るくなるものの、黒画面のまま操作できなくなりました。ログにはDarkWakeやGPU・PS/2系ドライバーの応答遅延がありましたが、原因は確定していません。GPUの復帰用設定igfxonln=1も試しましたが、改善は確認できませんでした。
そこで修復をいったん中止し、sudo pmset -a disablesleep 1で本体スリープを禁止。実機でSleepDisabled 1を確認しました。一方、ディスプレイだけの消灯はmacOSのGUIで設定できています。スクリーンセーバー解除時のパスワード要求も、ロック画面設定の時間指定を確認しました。
注意:スリープ禁止中は蓋を閉じても本体が動き続ける可能性があるので、カバンに入れる前にはシャットダウンします。画面消灯が正常でも本体スリープ復帰が直ったわけではありません。
5. 内蔵SDカードリーダーは保留
内蔵SDカードコントローラーはO2 Micro 1217:8520と確認。Apple標準ドライバーに結び付けるcompatible設定を試しましたが、カードを挿した状態での起動停止が発生し、OS起動後にも実用動作を確認できませんでした。現在は調整を中断し、挿したまま起動しない運用です。なお、BIOSからSD起動できるようになる修正ではありません。
6. HDMI外部ディスプレイが紫色になる
外部モニター「G-16U」は1920×1080で認識されるのに、表示全体が紫色。モニター自身のメニュー表示は正常で、HDMIケーブルを交換しても改善しませんでした。
診断では、外部画面を担当するAppleIntelFramebuffer@1がconnector-type = 00040000(DisplayPort)として表示されました。そこでOpenCoreの設定にframebuffer-con1-type = 00080000(HDMI)を入れる案を試しました。再実行時にはALREADY_APPLIEDとなり、少なくとも設定済みであることを確認。ただし、再起動後に紫色が改善したという実機結果は、この原稿時点では未確認です。
この種の現象とコネクター設定については、DortaniaのOpenCore Post-Installガイドも参考になります。ただし別機種での成功例が本機の成功を保証するわけではありません。
工程別:使ったモジュール・ツールと参照先
通常起動後の改善で関係した主要なkext・設定・診断ツールです。Wi-Fiや音声の動作確認と、SD・HDMIの設定試行は別の段階として記載しています。
| 工程 | 名前 | 説明・実際の扱い | 開発元・資料URL |
|---|---|---|---|
| 内蔵SSDから起動 | OpenCore 1.0.8 |
外部USB媒体から内蔵SSDのEFI領域へ移したブートローダー。内蔵SSD単独起動を実測。 | 公式ページ |
| GPU:基盤 | Lilu |
WhateverGreenやAppleALCなどを支えるkextの基盤。 | 公式ページ |
| GPU・HDMI調整 | WhateverGreen |
Intel HD 620の描画補助と、HDMIのコネクター種別設定の検討に使用。Metal確認とHDMI色問題は別判定。 | 公式ページ |
| Wi-Fi | AirportItlwm 2.3.0(Ventura用) |
Intel AC 8265のWi-Fi用kext。通常利用は確認済み。 | 公式ページ |
| Bluetooth | IntelBluetoothFirmware |
Intel Bluetooth機器へのファームウェア供給を担当。組み合わせて実利用を確認。 | 公式ページ |
| Bluetooth | IntelBTPatcher |
Intel BluetoothをmacOS側で扱うための補助kext。同じIntelBluetoothFirmwareプロジェクト。 | 公式ページ |
| Bluetooth | BlueToolFixup |
macOS Monterey以降のBluetoothスタックとの互換性補助。BrcmPatchRAMプロジェクト内。 | 公式ページ |
| 音声 | AppleALC |
ALC255の音声対応。起動引数alcid=3を使い、実際にシステム音が鳴ることを確認。 | 公式ページ |
| 入力・復帰の調査 | VoodooPS2Controller |
内蔵キーボード・タッチパッド用。復帰遅延ログでは原因候補だが原因確定ではない。 | 公式ページ |
| スリープ回避 | pmset |
macOS標準の電源管理コマンド。disablesleep=1を設定・再確認。スリープ復帰の修復ではない。 | コマンド仕様 |
| SDカード・HDMI試行 | OpenCore DeviceProperties |
compatibleやframebuffer-con1-typeを設定する仕組み。SDの実用動作とHDMIの色改善は未確認。 | 公式ページ |
| GPU・機器調査 | ioreg / system_profiler |
Framebufferの属性やGPU・ディスプレイ状態を読むmacOS標準診断ツール。 | コマンド仕様 |
7. 現在の実用状況
| 対象 | 判定 |
|---|---|
| Ventura 13.7.8 インストール | PASS |
| 内蔵SSD単独起動 | PASS |
| GPU / Metal 3 | PASS(診断上) |
| Wi-Fi / Bluetooth | PASS(実利用) |
| 音声出力 | PASS(システム音を確認) |
| マイク、ヘッドホン | 未検証 |
| スリープ復帰 | FAIL(保留) |
| 内蔵SDカードリーダー | FAIL/保留 |
| HDMIの紫色 | 設定確認済・改善判定待ち |
ここまで来たら、動かすために動かす段階から、日常用途で使う段階へ。ただし、macOSをApple以外のPCに導入する行為はAppleの公式サポート対象ではなく、ソフトウェア使用許諾上の問題もあります。セキュリティ更新や互換性にも注意が必要です。
次回:ここまでの作業では、人間がターミナルを打つより「AIに安全で再利用可能なスクリプトを書かせる」方にも改善余地が見つかりました。Python 3の依存、コマンドのコピー、成功判定の混同などを整理して、AI向けの簡単な標準とテンプレートを作ります。
シリーズを読む: その1|Ventura導入まで / その3|AI向けOneShot標準
続編(実用化編)/記録更新日:2026年10月26日。未確認の作業は未確認のまま記載しています。

