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【調理はバランス】もやしナムルで学ぶ過熱と食材

『加熱のメリット・デメリット』

食材を加熱することの意味で最も代表的なのは「感染症対策」です。

これはまったくもって退けがたいメリットになります。

 

現実問題地球上に存在するさまざまな食品(特に天然)はおおむね「菌」や「寄生虫」を持っていて、その多くは『加熱』によって無効化できるからです(但し、カビや一部の菌類が出した『毒素』は必ずしも熱では破壊されないのでご用心)。

 

【歴史と生食】

日本人は『生食』の達人ですが、これは「すばらしく長い歴史」によって育まれた奇跡のようなもので・・・・・・例えば世界遺産であるフランス料理にしても伝統的には『生食』はほとんどないのです。

ちなみに生食の歴史には犠牲がつき物・・・領国土佐で大量の「食中毒」が出たために「かつおの生食」禁止令を出した山内一豊(後に市民はこの禁止令を受けてハイブリット戦法の「たたき」を生む)

ちなみに生食の歴史には犠牲がつき物・・・領国土佐で大量の「食中毒」が出たために「かつおの生食」禁止令を出した山内一豊(後に市民はこの禁止令を受けてハイブリット戦法の「たたき」を生む)

そもそもフランス料理に本当の「歴史」が始まったのはわずか100年程度前という事を考えればそれもやむ得ないことです。

 

500年前にイタリアの貴族が嫁いだときにようやっとナイフとフォークが輸入され、100年前に貴族の支配が崩壊して、市中に「レストラン」というものが生まれた、エスコフィという名手がようやく『料理の手引き』という料理本古典を書き、今想像するフランス料理の基礎がやっと築かれました。

 

今のようなコース料理になったのもこのころ、しかもこのやり方はロシアからの逆輸入でした。

 

なぜこのようなことになっているかというと、それはやはり猛烈な『戦争』によって食品流通が混乱していたからなのです。

 

その点日本では戦乱が続きましたが『イクサ』は民族撃滅戦争ではないので職人や町民、さらには料理人などという人たちは混乱を恐れながらもやはり「ヨーロッパなどに比べれば平穏に」すごせたわけです。

料理の歴史も長く、9世紀には「四条流包丁式」という形で料理法が再編されました(天皇の命令で作られた『新式』がこれ・・・・・・ということはそれ以前の旧式もあったということになります)。

 

室町時代には14世紀にはこの四条流包丁式をまとめた本の存在が認められ、江戸時代の初期にはすでに庶民向けの料理本『料理物語』が出ています……。

はい、脱線しました!!

 

【加熱のメリット・デメリット】

話を元に戻すと、『加熱』の大きなメリットは『除菌(除虫)』です、そして逆に大きなデメリットは実に『栄養の破壊』なのです。

 

加熱をすると特に『ビタミン』は破壊されてしまうし、脂分を焦がせば『活性酵素』といわれる『酸化した脂肪酸』が発生してしまうと『焼きすぎ』には良いトコなしです。

 

『酸化した油』は明確に『人体に毒』であり、『ビタミンが破壊』されてしまえば野菜の意義は半減してしまいます(食物繊維やミネラル系のものはもちろん取れるから煮物がまったく無意味というわけではないですが)。

【クリックで拡大】東芝の研究より、長時間加熱でビタミンは減衰している、但し一定期間の過熱では『逆に』ビタミンの量が改善している。ただ野菜の種類はおそらく『根菜(熱に強い)』、茹でて加熱する場合は水溶性ビタミンはどんどん茹で汁に流れてしまう、また「食材の余熱」で加熱される時間も当然加算されるので注意。

 

【生食は栄養的には当然】

日本人は「ごく自然に」「長い平和」のなかで「食品をより良く摂る方法」を捜し求め、さまざまな食品を『生食』する方法を見つけて来ました。

悪い言い方をすると日本人は「ヒマに任せて食べ物をより旨く食べる方法を追求した結果さまざまな食品を『生』で食べる方法を発見してきた」とも言えるわけです。

 

これは平和的で優れた道楽ですし、実際現在世界の人々を楽しませて、その健康に貢献している日本がもっと誇るべき文化です(2013年にようやく世界遺産にもなりましたが)。

ローマに「ローマ法に影響を受けている世界の地域」の地図があるのですが、日本も同様のものを作ってかまわないくらいです。

 

どちらにしてもこの『生食』が優れていることは世界中のさまざまな料理が日本料理のこのコンセプト「より自然で、よりフレッシュで、より素材の味を生かした調理」を受け入れていることでもわかるはずです。

 

【加熱のポイント】

もちろん加熱するのはかまいません。
一つには「除菌」するため、一つにはもやしなどの芽のものを「長持ち」させるため、そして組織を適度に崩壊させることで「食べやすくするため」、卵などであれば一部の酵素を「不活性」にするため。

【T-Fal フードカッター】とはいえ、「食べやすくする・消化を助ける」だけなら、「細かく切る」というやり方もある。これだけ細かく切れば豆腐にも乗る(きざんだあと酸化防止にエゴマ油と混ぜている)

しかし、加熱の時間はできるだけ『短時間』である必要があります。
なぜならば、加熱によって食品の『栄養』特に人体に吸収されるべき『ビタミン』が破壊されてしまうからです。

 

加熱の最適な時間は、食品によって大きく異なりますが、ポイントは下の二つのバランスを取ることです。

 

まず、可能な限り「切ったり」「削ったり」する前に『加熱』するのが最良ですが。

1)きちんと除菌、除虫できる温度に一度すること

(内部温度65度5秒とか、70度3秒とか定めがありますがまあ、これはフィーリングでしょうね、一度調理用の温度計で測ってみても良いでしょう)

2)型崩れや、色落ち・変色ができるだけしない程度の加熱をすること。

ということになります。

要は『加熱しすぎない』ということですが、下のモヤシナムルの最後に「真珠のような」と説明しました『良い火加減のものは生よりも美しくなる』事を体験してみてください!!

 

さて、切らないほうが良いのはそうなのですが大きなもののほうが『内部温度』をあげるのが難しいので(除菌ができないなら加熱は半分以上無意味です)、やはり食材の『かたさ』に応じて小さく切る必要はあります(食材を洗うのは「切る前・皮をむく前」だけにしましょう)。

 

【生で食べるものは食材を選ぶ】

そして、生で食べる食材についてはよく吟味しましょう。

…魚で言えば「刺身用」を買うように、野菜であってもよいものを買い(オーブンなどで焼いてしまう場合はスーパーで買ったものをよく洗って使っても良いと思います)、皮をとらずに良く洗ってから『調理』したら直ぐ…つまり、『切っ』たら直ぐに食べましょう。

これは洗浄や過熱をしないことで生まれる「除菌・除虫・除染」ができないというデメリットを抑え、『生食』のより効率よく栄養が摂れるというメリットを生かすためです。

 

【演習 モヤシナムルの解説】

モヤシのナムルというのは非常に理にかなった調理食品です。
(日本で言えば『おひたし』という事になります)

モヤシは皮をむいたりせず調理できるため、調理が簡便で、洗ってもビタミンが抜け出すようなことがありません

「芽」になっているため栄養豊富(発芽玄米という食品もありますが、実は『種』より『芽』のほうが人間にとって栄養的メリットが多いのです)。

加熱をすることでもやしの「成長酵素」を破壊することができるので『日持ちもするようになる(→モヤシは火を入れなければ2~3日で黒くなります…自分の酵素で自壊しているのです)』と、さらに最後に「ごま油」で表面をコーティングするので酸化にも強くなります・・・・・・まさに文句のつけようが見つからない食品です!!

これはニラとか豆板醤とか入れちゃったけど、まあモヤシの感じという事で・・・。

 

【モヤシナムルの作り方】

文字通りの3分クッキング、それ以上の時間をかけているとおそらく失敗している。

1)モヤシを洗う
2)大き目の鍋に塩を入れてよく沸かして、これでモヤシを茹でる(30秒ほど)。
3)大き目のボールに水を入れておき、2)で茹でたモヤシを冷やす。
→ちなみにこの「急冷処置」をしないと、ナムルなりおひたしなりは「ぐにゃり」として「変質」して旨くはならないものです。余熱で『加熱しすぎ』になってしまうからです。
4)別のボールに調味料(ごま油、塩、少量の醤油、あれば味噌、さらに余裕があるなら刻みねぎ、ゴマ)を用意しておき、3)で冷やしたモヤシを水切りしていれて混ぜる【完成】

うまくいけば「火は通っているのに」「しゃきしゃきとしていて形が崩れず」「真珠のように透き通った」モヤシナムルになるはずです。

モヤシなら費用はほんの数十円、モヤシナムルを作って一度「野菜に対しての良い加熱」を「体感」しておけば、『おひたし』はもちろん、『野菜炒め』もおいしく作れるようになるはずです。

ちなみに上の写真のナムルを作りたい場合は、4)のボールに入れておく調味料は以下のようにする。

(モヤシ一袋に対して)

しょうゆ(1)
ごま油(1)
一味(1)
豆板醤(1/2)
塩(少々)
ゴマ(少々)
ねぎみじん切り(少々)
※()内は大さじ、少々はざざっと振る程度で。

最近は3)の「水で冷やす」ところで逃げるビタミンを最小限にするために、3)をやめて4)の調味料を金属製のボールに入れて、周りから氷で冷やしながら混ぜ合わせて温度を下げている。